プロジェクト概要
第一弾は能の代表作「道成寺」「隅田川」を、能のストーリーとは180度違う解釈で描きなおすところから始まり、全く新しい「道成寺NEO」「隅田川」が生まれました。第二弾は韓国神話と日本神話が融合した『シンバリ姫』。未だに成仏できないバリ姫を日本の俳優(ワザオギ)が韓国に訪れ救う、越境神話の舞台です。第三弾はギリシャ悲劇と能が交錯する『メディア能』。スウェーデンやデンマークのコンテンポラリーダンサーと日本の俳優陣、河崎純をはじめとする現代音楽と能楽が交差しました。第四弾はマレーシアのシェイクスピア劇団とのコラボレーション『デズデモーナ』です。
それぞれ東京の様々な能舞台を上演場所として、能の型や様式、歴史を乗り越え、その真髄が各地域・各国の文化とハイブリッドする。そこから生み出される新しい能の世界と、それを裏打ちする伝統技術と魂を次世代に繋ぐことを目指しました。観る人が驚き、心を深く動かされる作品群です。
四部作フォトアーカイブ
特別ビジュアル
デズデモーナ(特別掲載)
第四弾『デズデモーナ』
第一弾『道成寺/隅田川』
第二弾『シンバリ姫』
バリ神話系アーカイブ
成果と意義
1. 伝統芸能の「脱構築」と「言葉以前の芸術」への昇華
このプロジェクトは、能楽を単に現代化するのではなく、能の本質である「様式化された身体」「幽玄な物語」「霊魂の救済」を異文化要素と対等に混ぜ合わせることで、言葉や文化を超え、魂に直接語りかける芸術へ高める試みに成功しました。
2. 異文化の「融合」ではなく「響き合い」
マレーシアの俳優、日本の能楽師、韓国の巫女、インドの音楽が、個性を保ったまま調和し、各文化を並列に置くだけではない、深い対話に基づく舞台を実現しました。
3. 東京の能楽堂から世界へ
全作品を都内能楽堂で上演したことで、日本古典芸能と世界各地の表現が響き合う現場を東京から発信。国内外の観客へ、日本発の高品質な舞台表現を強くアピールしました。
4. 未来へ向けた芸術文化の発信力
子どもから大人までに新しい発見と感動を生み、新たな担い手と発想を育て、文化芸術の裾野と質を高める循環を生み出すことを目指しています。
波及効果(総括)
- 伝統の脱構築と再構築の成功事例として、現代の芸術家に具体的な指針を示した。
- 愛や死といった普遍テーマを、国境と言語を超えて届ける可能性を再発見した。
- 異文化連携を「共存」から「新価値創造」の有機的プロセスへ押し広げた。
- 日本語・英語・タミル語が交差する現場で、非言語的コミュニケーションの力を証明した。
- 異文化を消費するのではなく、理解し尊重して共創する新しいモデルを提示した。
観客の声(要約)
総評
全体を通して、「伝統芸能の脱構築が極まっている」「凄すぎて笑ってしまうほど面白い」という強い驚きと興奮の声が多数寄せられました。インド楽器と和楽器、能囃子と現代音楽のセッションは「鳥肌モノ」と評され、舞台全体が一つの生命体のように響くという感想が目立ちました。
『デズデモーナ』への声
橋掛かり・揚げ幕・本舞台の構造が彼岸と此岸として立ち上がり、シェイクスピア悲劇が能の身体と様式の中で昇華される感覚に、大きな感動が寄せられました。マレーシアのKLシェイクスピアプレーヤーズと日本の俳優・舞踊家・歌舞伎役者・狂言師が違和感なく共存し、日本語・英語・タミル語が交差しても「全部伝わってくる」という体験が共有されています。
『シンバリ姫』への声
韓国伝統音楽(杖鼓・伽耶琴)と能の謡・所作が生む緊張と柔らかさの同居、巫女バリ公主の舞、静けさの中の激しさが高く評価されました。異文化要素の並置ではなく、魂のレベルでの響き合いとして受け止められ、愛と死、救済と祈りが深く届いたという感想が印象的です。
『メディア能』への声
ギリシャ悲劇・能・コンテンポラリーダンス・生演奏の融合が「圧巻」「不思議な体験」と評されました。演者の高度な身体訓練、発声、体配、緻密な所作、クライマックスでの存在感が称賛され、「言葉以前の芸術」として感情を強く揺さぶられたという声が多く寄せられています。
観客に残したもの
「自分の挑戦の答えを見た」「背中を押された」という言葉に象徴されるように、本シリーズは鑑賞体験を超えて、観客個人の創造や生き方にも影響を与えています。能の核心である「魂の救済」「愛と死」「時空を越える語り」が、現代の多文化社会においても強く有効であることが確認されました。
観客の声(原文)
伝統芸能の脱構築!ここに極まれり。
もう、凄すぎて、面白すぎて、ちょっと笑っちゃうくらい。
特に、インド楽器と和楽器が火花を散らしながらセッションする音楽は、本当に鳥肌モノでした。
マレーシアと日本の俳優、舞踊家、歌舞伎役者、狂言師…と、全く背景の違う表現者たちが一つの舞台に立っているのに、何の違和感もない。日本語も英語もタミル語も飛び交ってるのに、全部伝わってくる。
「僕が今やろうとしている挑戦の、一つの答えがここにある…」と、背中を強く押されたような気持ちです。
橋掛かりを通して揚げ幕と本舞台が彼岸と此岸になり、その中で死者であるオセロの登場人物が能の所作の中で演じることで、舞台上でシェイクスピアが「能」に昇華されるかのような感覚すら覚えました。本当に、素晴らしい学びと感動をいただきました。
マレーシアのKLシェイクスピアプレーヤーズのトップ俳優たちを含めた同国のパフォーマンスアーチストや舞台俳優たちに、個性豊かで存在感溢れ、異なるバックグラウンドを持つ日本の俳優陣が融合される。そこに、能楽囃子にロガンドランさんの歌の語勢と格調が物語を紡いでいく。
キプロスの地に辿り着いた日本の僧侶が、海岸で見つけた羽衣。そこにギリシャ神話の女神アフロディーテが現れ、羽衣に纏わるオセロとデズデモーナの悲劇の物語を語ると言うオリジナルの戯曲。異なる文化を背景にした叙事詩が合わさり、各々の異文化の中に生きてきた演者の方々によって演じられるハイブリッドの演目。能楽堂に観たことが無い世界が創り出された。
魂の救済 愛と死、人の心…様々の思いが渦巻き、この舞台に出会えたことに感謝です。
今回の演目は能という静謐で重層的な芸術と、シェークスピアという激情を孕むドラマが、国境も言語も越えて交錯するこの舞台は、まさに「異文化の響き合い」と呼ぶにふさわしいものでした。
舞台に立つ俳優たちは、どの方も類まれな身体訓練と発声を積み重ねてきたことがひしひしと伝わる演技で、体配(たいはい)の美しさと発語の安定感が、力強く迫ってきます。
そして、音楽。能の囃子方に加え、インド現代音楽の要素を織り交ぜたハーモニーが舞台を包み込み、台詞や動きと渾然一体となって、まるで舞台そのものが一つの生き物であるかのように響いてきたのは圧巻でした。
それはまさに「言葉以前の芸術」。
国籍も文化も超えて、魂がふるえる瞬間が確かにそこにありました。
室町時代から現在まで続く能舞台。
霊魂が過去を語り、時空を超えてゆく。
愛や死といった普遍的な人間のテーマを扱い、
様式化された身体の動きで、
静かに優美に深く強く表現する歌舞劇。
日本の能楽に朝鮮半島の伝統音楽が絡む
杖鼓は周辺を軽くたたいてから撓りのよい細いバチでバシリと打てば場が引き締まる。反対の面を手の平で打てば柔らかくボっと鳴る。伝統楽器の伽耶琴は、胴の一端を膝の上に載せ、爪をはめずにつま弾く。弦の上をクックックと滑る指使いのあざやかさ。これも日本の筝の琴とは異なり、性急ながら柔らかい調べ。
チマチョゴリの裾を膨らませ波打たせ、巫女、バリ公主は自身の運命を呪って舞う。謡の重低音が、一気呵成に筆を滑らせた壁に共鳴する。
能を堪能することができました。様々なものの融合が面白く体で心で感覚的に受け取れて…言葉で表せないですが感情が揺さぶられ鳥肌や怒り、恐怖などが次々と自分の中で沸き起こっていた。音や所作を細かくみさせて頂いてたのですが…面を被り着物?を着て暑い中、話してないときも立ち姿も見事でしたし。歌のときとセリフの時の発声の仕方、それぞれ繊細ですごいなと。
今井さんには圧巻!!
一人で、あんなに匠に第一声というスタンバイ状態から目が耳が釘付けでした!よぉーのバリエーションというか、感情がストレートに響いてきてそれだけでも泣きそうになったり…いや凄かった!
布の使い方も面白かったし、僧と巫と神のやりとりの所作。一糸乱れぬ。静かさの中の激しさもかんじ、不思議でした。
あの楽器たちの音色が、能とうまく調和されててまたクラシックとかと違って、こういうコラボもいいな、ありだなと思いました。
今村さんのちょっとしたハプニングもさすが、うまく建て直してたのにはプロだなと。
コントラバスさんにも注目してて、アイコンタクトしあいながらの演奏。激しくも力強い演奏!素敵でした。
クライマックスの方に、イアソンが出てきたときの存在感。一語一語から、ストレート二感情が流れ込み。感情移入して激しく心揺さぶられた。覇気みたいなものがすごかった。
コンテンポラリーダンス、初めて拝見いたしました。ダンスと生演奏、能の融合、演者の方々から、直接伝わる舞台の素晴らしさを感じさせていただきました。
自然の風、舞台から流れてくる木の香り、飛行機の音、不思議な感覚を覚えました。
メディアの女として情念、母としての心、そこに触れた時、涙が流れておりました。
私の心の琴線に触れる舞台でした。ありがとうございました。
能楽堂という、それだけで不思議なエネルギーが充満した空間が、能の演出をベースに、北欧のダンサーによるコンテンポラリーダンスや西洋の楽器など、様々なジャンルの芸能が詰め込まれてとんでもない空間となり、能とギリシャ悲劇が融合したクライマックスは圧巻そのものでした。
メディア能という、能とギリシャ悲劇とコンテンポラリダンスの融合という着想がとても面白かったです!舞、唄、演技、ダンス、音楽、それぞれの演者さんが縦横無尽に古今東西時空を超えて能舞台の上で交わっていて、舞台を観ていて不思議な体験ができました。子役の星川きらりちゃんかのんちゃんがとても可愛くて上手で魅力的でした。舞、唄、演技、細部にわたり考え抜いて体の内部から放つ光は素晴らしかったです!